「Vol.39」

グドール先生の
『愛シリーズ』


刑務所の中のクリスマス

この出来事は、カナダの新聞に載った実話です。
クリスマスの夜、一人の女の子が冷たい北風の吹き抜ける暗い道を小さなプレゼントを胸に抱いて、
震えながら歩いています。
実はその子のお父さんが殺人犯でつかまえられていたのです。やがて、刑務所の門の所まで来た女の子
は守衛のおじさんに言いました。

 「すみません。お父さんに会わせてください」
 「だめだ。もうとっくに面会時間は過ぎている。明日来なさい」
 「あのー、お父さんにクリスマス・プレゼントを渡すだけなんです。ちょっとだけ」
 「だめ、だめ。刑務所の規則は厳しいんだ。明日来なさい」
 「明日はもうクリスマスが終わってしまいます。お願いです。ちょっとだけお父さんに会わせてください」
 「だめだと言ったらだめだ。今日はもうだめだ。明日来なさい」
とうとう女の子は泣きだしてしまいました。しかしちょうどそこに刑務所長が通りかかりました。かわいそうに
思った所長は、女の子の顔をのぞき込み、やさしく言いました。「おじさんが、そのプレゼントをお父さんに渡し
てあげよう。今すぐ渡してあげるから泣かないで帰りなさい。明日、お父さんに会いにおいで」

実はその女の子のお父さんは手のつけられない囚人でした。独房の中で所長からプレゼントを受け取った男は、
リボンをほどき包みを開けてみると、そこに一枚の紙切れが出てきました。
 「大好きなお父さんへ。お母さんはどこかに行ってしまいました。クリスマスが来たので、お父さんに何か
プレゼントを贈りたいと思いましたが、お金がありません。そこでお父さんが大好きだった、私の赤い巻き毛の髪を
切りました。お父さん。
お父さんが帰ってくるまで、私はがんばります。お父さんもがんばってください。刑務所は寒いと思います。
風邪をひかないで・・・・・」
  
読んでいく男の目には涙がどっとあふれました。男は箱の中から娘の赤い巻き毛をつかみ出すと、その中に顔を
埋めて泣き出しました。

その次の日の朝、男はまるで別人のようになっていました。大きな刑務所の中で、もっとも模範的な囚人に生まれ
変わったのです。
 



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